理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.016

「精神科」VS「心療内科」

最近、このコラムがどうもウケ狙いで、笑いをとる方向に走りすぎているというスルドイ御指摘を
受けまして、今回はちょっと専門的な分野でまいります。

つい先日も、我が国における自殺による死亡者の数が1998 年以降連続して30,000人を超えているという報告がありました(未遂者はナントその10倍!とも言われています)。自殺既遂者の70%は男性で、特に中高年と言われる世代の増加が顕著になっています。御存知の方も多いかと思いますが、抑うつ状態が原因で某大手広告代理店の社員が自殺をしたケースにおいて、2000年に裁判所が業務と過労自殺には因果関係があると認め、会社側に安全配慮義務違反と注意義務違反の責任を認めさせたことで、労働者のメンタルヘルスに対する事業者の責任が拡大したわけです。これにより働く側にも、働いてもらう側にも、益々メンタルヘルスを重要視せざるを得ない状況になってきていると言えましょう。

ではそのメンタルヘルスなるものを一体何処で、どの様に受診するのが最良であるのか?と言うことですが、皆さんは医療を受診するにあたっては、まず自分の症状に応じて標榜科をチェックされると思います(いくらなんでも頭痛があって泌尿器科に飛び込む人はいないでしょう)。基本的にメンタルヘルスを扱う診療科は「精神科」が一般的なのですが、どうも我が国に於いては「精神科」に受診をすることに対しての抵抗感が未だに根強く残っているようです。最近の厚生労働省研究班の疫学調査によると、我が国では現在15人に1人!がうつ病にあり、専門科への受診率は約25%だそうです。つまり75%の人達は、受診が出来ないのか、したくないのか、したくても躊躇しているのか、といったところなのでしょうか?そこで一般の方がよく言われる事で、我々が現場でよく耳にする言葉は「心療内科なら受診しても構わないが、精神科を受診するのはイヤ!」といったものです。

それでは皆さんは「精神科」と「心療内科」の違いを御存知でしょうか?これは現役の医療従事者においても曖昧な捕らえ方をされている人がかなりいるようです。では一言でその違いを説明するとすれば、心療内科は「内科」の一種と考えてくだされば良いと思います。つまり呼吸器内科とか、消化器内科といった類です。ですから症状としての身体症状が必ずあるわけです。その原因不明とされる身体症状(頭痛、腹痛、めまい、しびれ感、など)が心的原因(ストレスなど)で引き起こされた状態を心療内科医が診断、加療をするということになります。では、精神科ではどんな症例を診療するのかと言えば、その前に「精神科」という標榜科の名前そのものが非常に怪しいものと言わざるを得ないと常日頃より私は思っているわけです。まず精神なるものは人体のどこに、どのように存在しているものなのでしょうか?人の感情、欲望、情動、etc.といった高次機能を司っているのは「脳」であることは周知の事実であり、であるならば「脳神経科」とか「脳機能科」あたりの名前に落ち着くべきではないのかと思いますし、実際処方する薬剤の多く(向精神薬)は脳内の神経伝達系に働きかける物ばかりです。診断名で列挙すれば、統合失調症、躁うつ病、てんかん、痴呆症、睡眠障害、摂食障害、人格障害、などになります。

何年か前に心療内科の女医さんを主人公にしたドラマ(そ〜、そ〜、室井滋さんがやってたあれです!)を某局で放送していましたが、その番組内容において本来の心療内科では実際に取り扱わない症例を用いたために実際の臨床現場で混乱を引き起こしてしまい、おそらく心療内科の学会等からテレビ局にクレームが出されたのだと思いますが、番組が何話か進んだところで「実際に心療内科では取り扱わない症例がドラマでは使われている・・・」との注釈が流されていたことを御記憶の読者もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在巷にある多くのメンタルヘルスを扱うクリニックの標榜には必ずといっていいほど「心療内科」が掲げてあります。ではそれだけ心療内科の医者が存在しているのかと言うと決してそうではなく、そこにはわが国における標榜科のシステムにからくりがあるからなのです。つまり現状では、どんな医師が、何科でも、自由に標榜できる(私が明日から突然「自分は産婦人科医である!」と言っても、法的には何の問題もないということ)ため、患者さんが来院してくれなければ当然クリニックは経営できなくなる多くの精神科医が、開業にあたっては出来るだけ患者さんの受診に対しての敷居を低くする意味で「心療内科」をいの一番に標榜しているわけです。つまり先述の「心療内科なら受診しても構わないが、精神科を受診するのはイヤ!」と言って、あえて精神科を受診しなかった患者さんの主治医のほとんどが実は精神科医であるわけです。「そ、そ、そんな詐欺まがいのことがあっていいのか!」と決して御立腹なさらずに。「心療内科なら・・・」といっている人達の症状の多くは、精神科の疾患であることがほとんどと言っても過言ではありませんから御安心ください。

前回のコラムの件で読者から「あのタクシーで目的地には無事にたどり着いたのか?」との御質問をいただきました。御心配をお掛けしてどうもすみませんでした。何とかたどり着いて『通常料金』をちゃんとお支払いして降車いたしました。にっこり微笑んで「これからも頑張ってね」の一言も忘れずに添えて。

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