理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.050

『抗不安薬』

ブログメインタイトル

この拙コラムも「院長の部屋」から「理事長の呟き」に改名されて、今回で何とかVol.50(通算でいくとナントVol.444でしたぁぁぁ!)を迎えることとなりました。基本的に1日と15日(今回も締め切りに間に合いませんでしたが・・・)の月に2回更新ですので、新しい名称になって2年は何とか持ちこたえた計算でございます。

東京の桜も14日に開花宣言されましたが、コラム読者の皆様に於かれましては春本番を迎える今日この頃、その後もお元気にお変わりなくお過ごしのことと存じます。その開花宣言ですがマスコミ共は『観測史上最も早い!!』と騒ぎ立てていますけれど、2020年、2021年も同じ3月14日の開花だったわけですから、「地球温暖化続きで“例年通り”に3月14日に開花致しました」と報道する方が正しいと私は思いますが如何でしょうか?

先日患者さん(飛行機のような閉鎖された空間に長時間いることが辛い症状の方)との診察の中で、「飛行機での移動中はずっとこのコラムを読み続けて不安を解消します」と私の拙コラムが抗不安薬の服用よりも有効であることを立証してくれたケースがございまして、こんなコラムでも長いこと続けていたら、たまには人様のお役に立つこともあるようでうれしくなりました。

そこで我に返って考えてみると、『その恐怖に必ずや打ち勝つことが出来るような文章にしなくてはならないのね』という、妙なプレッシャーが私の方に降りかかりまして、それでなくても最近遅筆気味なのに逆に私が“執筆恐怖”に陥ってしまうという現象に至っております。更新が遅れる言い訳その1。

そして遅筆の言い訳その2に今年のスギ花粉症問題もございます。なんでもここ10年来で最も大量に飛散しているようで、昨年の2倍から日によっては10倍以上の日もあると報道されていました。このコロナ禍でマスクが必需品となっていた3年間はそのマスクのおかげだったのか、あまり辛いと感じなかったのですが今年は“眼”がもう大変です。PCに向き合って文章を入力するにも字がかすんでぼやけてしまいます。(加齢によるものもあり?)

いくら何でもマスクで眼まで覆うわけにもいかず、今年は私の外来にいらっしゃる患者さんで花粉症をお持ちの皆さんはほぼ100%「今年は辛い・・・」と口にされますね。今月13日から新型コロナ対策としてのマスクを強制することが解禁され、自己判断での着用となり報道番組では道行く人たちに「あなたは今後マスクの着用をどうされますか?」と尋ねていたりしましたが、「コロナどころではなくて今は花粉症が大変でマスクを手放せないんです!!」という人の方が多いのではないかと思ったりしますけど・・・。

その不安症に打ち勝つことのできるコラムとは言ってはみたものの、そこはやはり確実にお薬に勝ることは不可能でございますので、不安に打ち勝つお薬のお話を少しさせて頂きます。我々精神科医が不安を訴えて来院される患者さんに処方するお薬は基本的には『抗不安薬』と言われる種類の物であります。お薬の系統としましてはベンゾジアゼピン(BZ)系の薬剤と言われております。

因みに睡眠薬と言われて処方されるものの多くは、以前まではこのBZ系と呼ばれるものが殆どでした。つまり抗不安薬として不安を抑える効果よりもその副作用ともいえる眠気が強く出るものは睡眠薬となり、不安を抑える方が優位なものが抗不安薬として処方されていると思って頂いて問題ないでしょう。

そのBZ系のお薬がここ最近「非常によろしくない薬」として一般的な雑誌や週刊誌等に記載されるようになって、「今すぐにでもやめないと大変なことになる薬」位のレッテルを貼られることも珍しくなくなっているのです。ではそんな危険な薬を小林は平気な顔をして処方しているのかと問われますれば、決して平気な顔をしているつもりはありませんが、現在服用して調子が良い方に「今すぐにでもやめてください!!」と言ってはおりません。

まず薬剤には必ず副作用というものが少なからず存在しております。それを承知したうえでその患者さんに投与するメリットとデメリットを天秤にかけて、明らかにメリットの方が大きければ選択をしているわけですね。これは精神科に限らず全ての臨床医が日々行っていることでございます。

もし副作用が全く0の薬であればそれが一番安全です。しかしいくら安全でも投与されても効果が認められなければ処方する意味もありません。患者さんが服用したという思い込みだけで症状が改善してしまう『プラセボ効果』と言われるものも確かに存在しますが、それはごくごくまれなお話でして、全ての疾患を「病は気から」で治せる医者がいるなら是非ともお会いしてみたいです。

私は常日頃より「真っ当な医療には患者さんと医者の間における信頼関係なくしては成り立ちません」と臨床の場で口にしてきました。「本当にこの医者で大丈夫?」、「本当にこの薬飲んで良くなるの?」etc. これで症状が速やかに改善するはずはありません。決して「医者が偉いのだから医者の言う事だけを聞け」と言う事も思う事もございません。常に同じ土俵の上で、お互いが持てる力を協力して出し合って、同じ疾病という敵に向かって戦いを挑むのが臨床の現場なのでございます。

PCやスマホで色々な情報を検索しているうちに、その人にとって耳障りが良さそうな情報をAIが察知して、勝手に送り込んでくる世の中になってきています。人というものはどうしても楽な方へ楽な方へと流れていくものですが、いついかなる時でも冷静沈着に自分にとって今何が重要で、どうする事が必要なのかを判断できる人でありたいと思いながら、桜の満開を心待ちにしている2023年の春でした。 

 

 

いつの日か全てのBZ系の薬剤を凌駕するようなコラムを執筆できるようになりたいものですが・・・。やはり不可能姉妹ですかね。

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