理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.021

『精神保健指定医なるもの』

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今年もいよいよ残り1ヵ月となってしまいました。諸外国(特にEU圏)では再び新型コロナウイルスの感染者が増加しており、大変な事態に陥っておりますが、我が国は本当に不思議なことに人流もかなり元に戻っているにもかかわらず、どういうわけか落ち着いた日々が続いております。それでも最近発見された(中国の偉いさんに忖度してWHOはネーミングのギリシャ文字の順番をすっ飛ばしたという噂の)オミクロン株とやらが、わが国の水漏れ検疫をすり抜けて入国したら第6波の出現は避けられそうもありません。ただいま死んだふりのオミ会長の出番が再び増えそうな変異株の名前です。

2020年の我が国における新規の癌患者の数が、2019年よりも約6万人減っているそうです。これは症例数が単純に減ったのではなく、コロナ禍において人間ドックや定期的な検診等を受けなかった人達が本来であれば早期発見できたものを、未受診で診断されることなくのちに今後進行癌として発見されてしまうという、由々しき事態になる可能性が非常に大きいのでございます。WithコロナのダメージからAfterコロナのダメージがこれから経済だけでなく様々なところに影響を出してきそうな予感です。

前回のコラムで“ある意味タフ”と評しました都議会議員の方も、遂にと言いますかやっと辞職を選択されました。おそらくは某知事室では「あなたは私の顔にこれだけ泥を塗っておきながら、まだしゃ~しゃ~と都議会議員を続けるつもりなのぉぉぉ!!場合によっては二度と政治の舞台に立てなくすることだって出来るのだからよく考えなさいよぉぉぉ!!」みたいな罵声が廊下にまで響き渡ったのではないかと想像するには難くありません。それを彼女はあの記者会見の場では、そのやり取りを「知事からも今回の不祥事を反省し、再出発する時には相談に乗ると言われた」と彼女なりの意訳をしてみせたのではないかと・・・(笑)

石油価格の高騰が大変なことになっております。これから冬に向けて石油の消費は増える一方ですから、多くの皆さんの生活にも影響を及ぼすことは間違いありません。随分前から半導体も世界中で不足して自動車の製造が追いつかない事態にもなっていました。それってまさか自動車を買い替えようとする人たちに一旦猶予する時間を与えておき、将来を見据えさせて今すぐ購入できないのならガソリン車を諦めさせて電気自動車に誘導させるという、新たな地球温暖化防止にむけての世界戦略なのではないかというのはちょっと勘繰りすぎですかね?(苦笑)

よもやま話はそのあたりにしておいて閑話休題。

この度小生は“精神保健指定医”なるものの資格を更新するために、5年に1度受講することが必須となっております講習会に行ってまいりました。ごく簡単にこの資格のお話しをすると、精神科医において患者さんに入院していただく際に、患者さん自身の意思ではなくある意味強制的に入院治療を受けさせる権限を持った資格なのでございます。そのように人における自由をかなり制限できる権利のようなものですから、厳格に診断や治療の必要性が担保された状態でないと人権侵害になりかねない行為なので、厚生労働省と言いますかそこは国できっちりと管理をされる資格となっています。数年前に資格申請時に提出するレポートの不備(偽装に近いもの)を指摘されて、さかのぼっての資格はく奪のみならず医業停止という非常に厳しい処分を受けた精神科医もいましたから厚労省はかなり厳格に対応しております。

よく色々な標ぼう科の“専門医”という言葉を耳にされることがあるかと思いますが、これは内科や外科といった様々な科の△□科学会という任意団体で認定をするものですから、国が直接かかわる資格ではありません。言ってみたらこちらは医師の国家資格に近いものと言っても過言ではないでしょう。そして入院をさせる権限だけではなく、入院をした後にも隔離室への入室指示や、ベッド上での拘束の指示も精神保健指定医ではないと出せない権限なので、当たり前といえば当たり前なのですが人権への配慮はかなり厳しく規定をされているのです。

我が国における少子高齢化の波は衰えることなく進行するばかりです。よって高齢者の認知症の入院治療場面では、上記のような件が常に問題視されているのが現状なのです。夜間せん妄などを伴って徘徊する認知症患者さんを、スタッフが1対1で個々に付き添って夜間見守れるような施設などあるわけないですから、ベッドからの転落や徘徊時の転倒による事故を未然に防ぐためにどうしても抑制をしないと対応が不可能な施設は多々あります。

その“やむにやまれずどうしても・・・”の対応というのが一体どのレベルであれば適切なのかということが、昨今の医療現場と司法の間で争われることが日々多くなっているのです。確かにベッド上に拘束されるということは通常(怪しげな嗜好プレー以外)では人権を侵してしまうような行為であることは間違いありません。でもそれを法に触れるからという理由で一切実施しないで24時間好き勝手に行動をして良いとすると、今度はベッドからの転落や歩行中の転倒で外傷を負うと、それはそれで医療者側の監督責任を問われてしまい、そちら側の問題で家族から訴えられてしまうことになりかねません。

我々は裁判に勝つことを目標に日々患者さんと対峙して診療を行っているつもりはありません。患者さんにとって一番良かれと思う医療を提供するだけなのです。しかしその思いで継続してきた医療行為が結果として裁判で負けてしまうことになっては、それでは一体何のためにスタッフ一同で頑張って治療に携わってきたのか、これからどうすればよいのか、その答えを導き出すことは本当に困難になるわけです。

言えるとすれば総論的に皆さんに全て当てはまる絶対的な対応というものは存在せず、各論的に一人一人の個々に応じてきちんと対応する、しかもその時その時で常に状態や状況は刻々と変化しますから、それに対しても臨機応変に対応するしかないのでしょう。しかしこれって実際の我が国の医療現場では、このようにさらっと文章にしたり口にしたりするほど簡単なことではないことを理解していただかないと、理想と現実のギャップに生じるトラブルに対して、年がら年中司法が関与しなくてはならなくなるのでございます

基本的に法律というものは個人個人にオーダーメイドで存在してはおらず、「皆さんにとってはこちらが正しいですよ、皆さんとしてこれは間違っていますよ」と規定するものですから、個々に細かく対応せざるを得ない医療現場では、そのjudgementはどちら側にも転んでもおかしくない事例が少なくないのです。最終的に訴訟の結果がたとえ“和解”だといわれても、それはそれでどちらかに確実に白黒をつけた結末なのですから・・・。

 

 

講習などでこの手の話を見聞していると、一体あと何年したら自分は“縛る側”から“縛られる側”になってしまうのであろうかという思いに駆られ、残りの人生に対しての悲哀を感じ始めている2021年の暮れであります(苦笑)。

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