断筆宣言

突然ではございますが、このたびご愛読いただいておりましたこのコラムを暫くの間お休みさせていただく運びとなりました。

2003年に現在のクリニックへの移転を機に開始させていただいたわけですが、前回の70回を節目にしばらく充電期間をいただければ幸いでございます。

「医療のみにとらわれず気ままに語らせていただきます」と称して、本当に好き勝手なことを書き連ねてまいりましたが、読書皆様に“常に”ご心配をいただいておりました“家庭内の問題”のみならず、様々な諸事情により当分の間「断筆」ではなく、「断キーボード」とさせていただきますことをお許しください。

次回ここでお目にかかれる時には、一回りも二回りも太って・・・ではなく、パワーアップしてご覧いただけるようになっているつもりでおりますので、その時はまたご一読のほど宜しくお願いいたします。ここまでのご愛読本当にありがとうございました。またこのホームページでお会いできる日を楽しみにしています。

あっ、お久しぶりです。しばらくのご無沙汰でしたが、皆さんお元気でいらっしゃいましたか？

な〜〜〜んて、今日はエイプリルフールじゃぁござんせんか！すみません、まだまだ続けさせていただきますよ〜〜〜〜。たとえ読者が皆無になろうと、ボケてキーボードが叩けなくなっても必ず続けますってば！（これも嘘だな、きっと）

それにしても凄かったです。感動すら覚えました。あれだけの緊急事態に対して、全く動じることなく、冷静沈着に判断をして、乗員乗客がパニックに陥らず、安全に着陸に導いた今里機長（36）には、まさにアッパレ！の一言に尽きます。今度ANAに搭乗するときは、機長には是が非でも彼をご指名したいものであります。指名料は高くつきそうだけど・・・。

当然医療現場においても『不測の事態』は必ず発生いたします。私はいわゆる外科系の医者ではありませんので、一分一秒を争う手術の現場で日々奮闘するような経験はほとんどございませんでした。臨床の現場とは、「する側」も、「される側」も生身の人間ですから、100%、絶対、間違いなく、はありえないわけです。ですから起こってしまった不測（あとから検証すれば起こるべくして起こった事なのかもしれませんが）の事態に対して、いかにきちんと対応できるかが、その医師の能力判定のひとつになってしまうことは間違いありません。

もちろん、ありとあらゆる、起こりうる可能性のすべてを検証した上で医療は前進していかねばならないことは大原則ですが、先頭を走るものには常に未知との遭遇を避けて通ることが不可能な場合もあるわけでして、そこを安全に確実に通過できるかどうかは、ある程度のリスクと常に背中合わせになっているわけです。

以前私が大学病院で研修医の指導にあたっていた時、勤務初日に全員集合した彼らに向かって「まあ医者になって右も左も初めての中で色々と大変だと思うけど、最低限この“二つ”を常に頭の中に置いて仕事をしてほしい」と言っておりました。その二つとは
“priority”と“responsibility”であります。

臨床医が受け持つ患者さんはたった一人ではなく、しかも様々な状態の方がいらっしゃいます。そしてその状態も刻一刻と変化する訳です。一山を超えてもう大丈夫かな、と思っていたところ急変してしまうこともあります。そこで自分の体は一つしかないわけですから自分に課された仕事の“優先順位”を常に考えなさい！

そして新人の研修医であろうと、ご立派な大学教授であろうと、患者さん一人一人の前に立てば単なる医者であることから始まるわけですから、医者として課された“責任”はどんな職務であろうと全く同じであることを意識しなさい！

この二つです。まあこれは私がいくつになっても、どこで仕事をしていようと自分自身に対して戒めていることではありますけどね。今回の今里機長も、あのようなまさに青天の霹靂の状況下において、安全に着陸するための“優先順位”を冷静に判断して可能な限りのことを試みた上で、機長としての“責任”を全うするべくあのような決断で「胴体着陸」に臨まれたのだと思います。

それでも「言うは易し、行うは難し」でありまして、皆さんの中で大地震に備えて準備万端にされていらっしゃる方も、いざ本当にその時になって冷静沈着に判断して行動できるかと言われたら・・・？ではないでしょうか。私も医療現場においては常に“今里機長”でありたいと思う平成19年度初日でありました。

今里機長が既婚者かどうかまでは存じませんが、家に帰ってからも緊急時にあれだけ見事な“胴体着陸”ができるのであれば、別の操縦桿の操作方法をぜひ御教授いただきたいものですが・・・。（墜落!）