理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.103

主観的な治療

ど〜しても「♪ぽぉ〜にょぽにょぽにょ魚の子ぉ〜・・・」が頭の中を占拠しております。私は別に宮崎アニメの信奉者でも大ファンでも何でもないのでありますが、あの歌声にはまさに洗脳されたような状態であります。不思議です。酷暑の中コラム読者の皆様は如何お過ごしでしょうか?    ぽぉ〜にょぽにょ、・・・また出てきた!

今回はそんな宮崎アニメとは全く関係のないお話です。すんません。

それは私が研修医を終えて、約2年間だけ地方公務員をしていた(つまりは県立病院に勤務していた)時のことです。赴任して間もない頃(まだスタッフの顔も名前も一致しない頃)でした。院内ですれ違った病院スタッフの方が、足を少し引きずるような歩き方をされていたので、「お怪我でもされました?」と何気なく声をかけたところ、「僕、片足義足なんですよ」とさらっと返事をされたのです。

今でも覚えていますが、顔から火が出るほどの思いとはこの事です。穴があったら確実に入っていたと思います。それも相手の方は“いいんですよ、そんなに気を使わなくても”的な感じでさらっと、明るく返していただけたので、余計にこちらが恐縮をしてしまいました。

日々このクリニックで診療をしておりますと、当然髪のお話が大半を占めるわけですが、初診時に割とよくする質問で「最近他の人から薄くなってきたと指摘を受けたりしましたか?」というフレーズがあります。これはどちらかといえば、毛量は年相応というか、ちょ〜っと気にしすぎではないかい?と、こちらが判断するケースに使うことが多いのです。

当然答えは様々ですが、百戦錬磨が診てそこそこに髪はあるわけですから、当然「いえ、言われたことはありません」が多くを占めます。ただその言葉の裏には「他人がど〜こ〜ぢゃなくって、俺がボリュームダウンってんだから、何とかしてくれよ!」がほぼ100%胸の内に隠れております。

明らかに髪が後退してきた人に面と向って、「薄くなってきたね〜」としみじみ言うにはかなりの度胸とそれなりの信頼関係がないと言えないでしょう。それだけ髪に関しての問題とはかなりデリケートであるからですよね。

これも患者さんによく言うことなのですが、「何歳の人はこれ位地肌が見えてはいけない」とか「何歳ではこれくらい残っていることが正常だ」といった医学的な基準は全くないとうお話です。つまり血圧や血糖値やコレステロール値であれば、絶対的に数値としての正常vs.異常の境が明確なのですが、髪には“客観的”なデータを示す部分がほぼ皆無なのであります。

それ故に最終的には“主観的”に話を進めていかざるを得ないところが、髪の治療の非常に困難を強いられるところであり、そこに私が精神科医としてここに存在する意義があり、その面目躍如たるところと勝手に自負する部分なのでございます。

一方で当院にて順調に治療効果を認めた方に対して、周囲の人が「あれ、どうしたの髪増えてない?」と指摘することのほうが、実は「薄くなった?」よりもっと口にできない言葉なのはご理解いただけますか?良くなっているのだから問題ないでしょ。麻痺していた腕が動くようになったり、見えなかった目が見えるようになったら、素直に「良かったね」と言うではないか!とおっしゃるかもしれませんが、髪の場合はそうすんなりとはいきません。

今のところ医療だけで全ての患者さんに100%の満足感を持っていただくことは残念ですが不可能です。そうなると人によっては、増毛(1本の髪に数本の人工毛をくくりつける)を施行していたり、思い切ってカツラを着用していたり、最近CMでよくやっています“毛の生えたサランラップ”のようなものを貼り付けていたりと、あの手この手のバリエーションがありますから、逆に周囲は必要以上に気を使うケースも多々存在していることになるのです。

「あれ、ここ最近でなんか髪がふえたんじゃない?」

「あ〜、ついこないだ増毛2000本入れちゃったから」

「えっ、ゾ、ゾ、増毛・・・」

「民事再生を申請した“プロピア”のやつだけど、あっ、別に気にしないでいいから」

 穴があったら突き落とされます。部下なら左遷、友達なら絶交、親類なら離縁、だってきっとありうる話ですから・・・。

 

先日朝食を家族で摂っているときに、「あっ、髪切ったの」と娘に言われ、“そうそう、娘よ、よく気がついた”みたいな顔を妻がしておりましたが、切ったのは4週間位前で、そろそろ切りに行こうと床屋に数日後の予約まで入れていた矢先の梅雨明け宣言の朝でした・・・。トホホ。

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