理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.209

非常☆医師


2月も終わろうかと言う頃に史上最大級の寒波がやってきて、北国では観測史上最高の積雪を記録した所もあるようでございます。それでも一雨毎に春の訪れを少しずつ感じられる頃となりましたが、コラム読者の皆様に於かれましては、その後もお変わりなくお過ごしのことと存じます。

先日今年の医師国家試験を受験し終わったという、前途洋々の若者と一緒に食事をする機会がありました。ご存じの方も多いと思いますが、現在我が国に於いては医師国家試験に合格後は2年間の臨床研修(「スーパーローテーション」と呼ばれています)が義務付けられております。

それは卒業した大学病院でなくても、研修医を受け入れている病院であれば日本中どこで研修をしてもかまいません。ですから地方の国立大学は卒業生が都会志向になってしまい、若手の医師が再び地元に戻ってこないために医師不足が深刻化していることは以前このコラムでも書きました。

ですから首都圏の大学はそのような事はないのかと思いきや、母校で研修を希望する研修医は少ないとのことなのです。都内の大きな総合病院や他の大学病院を希望するケースが多いと聞いて、今の世の中はそんなことになっているのかとビックリいたしました。

確かに「井の中の蛙・・・」ではまずいと思いますし、新しい風に身を置いて研修することも大切な事かとも思います。そして研修後にどこで自身の根を張っていくかで、その後の医師としての将来にも大きな影響を及ぼすことは明らかであります。

その根を張っていく過程のお話ですが、最近は医師の人材派遣もかなり活発化して、リクルートなど大手の参入もあり著しい成長業種となっている事を皆さんはご存知でしょうか?一昔前は医者の人事は医局と言う“置屋”に、教授と言う“女将”と医局長と言う“番頭”が取り仕切っているのが常でありました。

この置屋システムが決して一番良いとは言いませんが、このシステムがあったからこそ我が国の津々浦々にまで医師が配置されていたといっても過言ではありません。そのシステムが先程のスーパーローテーションの開始によって、脆くも崩れ去っている現状(特に地方の国立大では顕著)が、地方の医師不足の最大の理由なのであります。

医療とは特殊な業態であり、国家試験に合格したからと言って広く浅い知識は多少あっても、専門的な知識や臨床技術は全く無に近い状態ですから、先輩たちの指導や自身の修練があって初めて患者さんの前に立てるようになるわけです。ある意味一生勉強といった部分も沢山あろうかとも思っております。

ですから実際に自分が生まれ育った環境(専門分野)以外で診療に臨むという事は、ある意味自分の専門種目以外の他種競技に真剣勝負を挑むような覚悟と、ある程度自分の専門分野における自信と実績が無ければできない事かと思うのですが、これがまた来るのですよ派遣会社の担当と一緒に研修終わってすぐのレベルで採用面接を受けに!

どういう事かと申しますと、当院ではお陰様で多くの来院患者さんがいらっしゃいます為、予約をより取り易くまた待ち時間の短縮などに努めるべく非常勤医師を募ることがあります。昔であれば先述のように置屋(医局)から生きのいい芸子(医者)がやって来て舞って(診療して)もらう事が多かったわけですが、最近では置屋が機能しにくくなったものですから芸子が自分で座敷(バイト先)を探さなくてはならないような状況が多くなり、派遣会社の力を借りて独自で売り込みをしてくるわけです。

よく知っている女将からの紹介であれば、よほどへんてこりんな芸子を送り込むこともないでしょうから、こちらとしてもある程度は安心して座敷を任せられます。ところが言葉は悪いのですが、全然見ず知らずの“どこの馬の骨ともわからん奴”をそんな簡単に「ハイお願いします」と私たちの大切な患者さんの前に立たせることはできません。

ですから採用に至るまでは数回の面接をして、過去の経歴や現在のスキル、なぜ故に当院での勤務を希望されたのか、今後の医師としての展望など事細かく質問して、どのような医者(人間)かをきっちり探ったうえで、我々が大丈夫と思える場合のみ採用をする、ってこんなことは医療に限らず何の業種でも採用なんてこんなものかとも思うのですが・・・。

まあその面接時の根掘り葉掘りがお気に召さなかったのか、先日逆ギレまでされて私のお渡しした名刺も机に置き去りにして立ち去ったお医者さまがいらっしゃいました。それが研修を終えて約1年臨床経験を積んだ程度のスキルに加えて、来年度からは今までと全く違った科に転科をするというのですから、こちらだってあれやこれや聞きたくなる気持ちも皆様お分かりいただけますよね。

研修を終えて1年位で、しかも全く自分の専門とは違うフィールドで患者さんに対峙できると思える“スーパー根拠レス”なその自信は一体どこから来るものなのか?場末のクリニックの非常勤外来なんて、やっつけ仕事で全く大丈夫とでも思っているのか?

たしか「精神科」に鞍替え希望と言っていたようでしたけど、非常勤というよりは“非常識”、正直申しまして医師という前に“人”として如何なものかと痛感させられた一症例でございました。





こんな感じで今の世の中、どこでどんな程度の医者が働いているのかわかりませんから、受診をするときはきちんと色々な情報を吟味(コラムなんかをしっかりと熟読!)した上でクリニックは選びましょうね(爆)

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