理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.032

SAS(睡眠時無呼吸症候群)

前回に引き続きまして、暑くて寝苦しい夜に関連させていただき、睡眠障害のお話その2です。
今回は「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」について少し語らせていただきます。

最近ではこの疾患の治療を中心にした睡眠障害専門クリニックも、あちらこちらで見かけるようになって来ましたので、御存知の方も随分いらっしゃると思います。症状としましては、読んで字の如しで“眠っている間に呼吸が止まっている事がある病気”でございます。もう少し専門的に言うと「睡眠時に呼吸が止まった状態が、1時間に5回以上おこる症状」で診断されます。

当然確定診断には実際に寝ている間の呼吸状態をモニターする事が必須になりますから、日中の外来診察では不可能なので最低でも1泊の入院が必要でした。ところが、先日筑波大学が自宅で就寝中にモニターできる簡易型の検査装置を低価格で貸し出して、SASの疑いがある人を医療機関に紹介するなどして治療を促すベンチャー企業を設立したと発表しました。(国立大学も独立法人化してからは、少しでも何とか自分達で稼がなくてはならない御時世となり大変であります。)これで簡単に自宅での検査・診断が可能になることと思います。

SASはただ寝ている間に、多少死なない程度に呼吸が止まっているだけの話なら何の問題もないのですが、質の良い睡眠がとれなくなってしまう事による様々な弊害が当然問題となっていくのです。まず、日中に眠気が来ます。すると集中力が低下し、ケアレスミスが多くなります。そこで新幹線が駅に停車できなかったり、飛行機が居眠り運転(操縦か?)をしたりしたわけですね。ともすると大事故にもつながりかねない事であり、アメリカの研究機関では、チェルノブイリの原発事故も、チャレンジャー号の墜落事故も、SAS等の睡眠障害のせいであり、睡眠障害で発生する損失は年間でトンデモナイ額であると言い切っちゃってます。

社会的損失はそんなもんでも個人的にはどうかと言えば、条件によっては先述のような重大事故にも繋がってしまいますし、治療をせずに放置することで毎晩起こる頻回の低酸素血症から循環機能に負担をかけ、不整脈、高血圧、虚血性心疾患や脳梗塞、脳出血の原因となり、生命にかかわる(いわゆる突然死!)恐ろしい病気とも言われています。

この疾患は睡眠に伴い喉頭周囲の筋緊張が低下し、気道の狭窄がおこり呼吸抵抗が増加して呼吸停止に至る閉塞型が殆どですから、肥満傾向で就寝時にいびきの強い人(えっ、ワタシ?)や、配偶者あたりから寝ている間に呼吸を“止められる”までもなく、“止まっている”ことが確認されている人(あっ、ワタシ?)、及び原因不明の日中の眠気、朝の頭痛、不眠や夜間覚醒、夜間多尿、作業能力の低下などが気になる方はSAS外来を受診し精査を受けて下さい。

治療としましては、まず基本的なところで肥満と飲酒量などが大きな原因になっているケースがかなりありますから、体重の減量および飲酒量のコントロールが、とにもかくにも治療の第一歩になります。それでも改善しない、若しくは痩せることもなく飲み続けるような場合(やっぱり、ワタシ?)、代表的な治療法として経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous
Positive Airway Pressure:CPAP)があります。これは鼻と口の部分にすっぽりとマスクをしたうえで、ベッドサイドの機械が強制的にエアーを送り込んで気道が閉じてしまう状態を防ぐものです。効果は絶大で、「日中やけに眠かったあの状態は何だったんだぁ〜」と言われる患者さんもおられます。ただし顔にかなりの圧迫感があるため「それが逆にうっとうしくて眠れん!」と使用を拒否される患者さんも少なくありません。そりゃそうですよね。ゾウさんみたいな感じで寝るわけですから、うつぶせに寝る人なんかはそれだけで逆に“命懸けの睡眠!”になってしまいます。あとはマウスピースを作成するケースもあるようですが、そちらも100%の効果とはいかないようですし、先日の学会では「横臥位で固定される抱き枕」(どんな枕じゃ!)の効果を報告していました。

とにかく、最近太って、いびきが凄くて、日中やたら眠くて、血圧が高めで、寝ている間に呼吸が止まっている(ような感じの)方はSASの可能性がありますので是非とも精査・加療をお勧めいたします。

こうなったら『婚姻届の署名捺印』ですら睡眠障害による現実検討能力の欠如によるもの!と言い出す人もでて来ませんかね〜(これも、ワタシ?そんな事“股”が裂けても絶対口には出来ませ〜〜〜ん)

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