理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.332

薬物依存再考

DRkobayashi1
GW後半からは夏のような陽気になったと思いきや、GWが終わったとたんに突然3月頃の気温に逆戻りして、場所によっては雹まで降り出すといった荒れたお天気の5月になっております。

このような寒暖差で体調を崩す方も多いようですし、沖縄に海外から持ち込まれたとされる麻疹(はしか)が、徐々に全国にも拡散傾向となっております今日この頃ですが、コラム読者の皆様に於かれましてはお元気にお過ごしの事と存じます

GW中に開催され、テレビ東京としては異例の高視聴率を記録した卓球の世界選手権団体戦ですが女子が見事に銀メダルを獲得致しました。ただそこで大きな疑問を呈したのは、今世界が朝鮮半島情勢の行方に注目をしている中で、大会途中で南北合同チームをいきなり結成してしまった事であります。

統一に向けての友好ムードが漂ってはいるにせよ、大会が開催されて熱戦を繰り広げている途中で、対戦相手同士が試合を放棄して共同チームを作って勝ち上がるなんて、こんなルールがスポーツ界にまかり通っていいものなのでしょうか?国際卓球連盟という機関は何を考えて運営されているのか私には計り知れません。来月のトランプさんの出方次第では今後における他のスポーツ競技への影響も出るかもしれません。

さて今回のお題はこのコラムでも過去に何度か取り上げております“アルコール依存症”を含みます『薬物依存』でございます。我が国の統計では2009年に「これまでに1回でも使ったことのある人の割合(生涯経験者率)」が報告されており、有機溶剤(シンナーやトルエンですな)1.9%、大麻(マリファナ、ハシシとも)1.4%、覚醒剤0.3%、MDMA0.2%、コカインとヘロインは統計誤差内(取り敢えず取るに足らずの数)だったそうです。

統計にあたっては全国の15歳以上64歳以下の国民5000人を対象にしたとありますが、しかしこれは地域差(山口県の町や村の5000人と歌舞伎町の5000人では明らかに出現頻度は違うでしょう)や本当に正直に回答をしたかどうかの誤差も考慮すると多少眉唾かもと思ってしまいます。

そして1回しか「やった」ことがないと正直に回答した人達は確かに違法行為を犯しているかもしれませんが、乱用をしない限り依存症にはなりませんので、本当に依存症の人がこの世に正確にどれだけいるのかは明言する事はなかなか出来ないものと思われます。

そこで薬物依存でよく問題になるお話ですが、依存には『精神』依存と『身体』依存がある事をご存知でしょうか?精神依存とは精神的に(気持ちとして)その薬物を欲することで自制が効かなくなってしまった脳の状態で、身体的な変調をきたすことは原則的にはありません。ですからある意味本人の意志さえ強く持つことが出来て、その状態を継続できる環境下に身を置けば依存から脱することも不可能ではありません。

一方で身体依存はその薬物が枯渇してしまったときに離脱症状(アルコールの場合は、手が震えたり幻覚(幻視は特徴的です)が出現したり意識障害を認めることもある)を呈してしまいます。そうなるとその苦痛な状態を回避しようとして、その薬物を何が何でも手に入れる行動(薬物探索行動)にでてしまい、これはもう自分の意志でコントロールすることは極めて困難なため依存状態を脱することが出来なくなるのであります。

で、その怖い、怖い、身体依存を確実に引き越してしまう薬物とは、麻薬(モルヒネやヘロイン)とバルビツール系の睡眠薬(これは今現在外来診療で処方される事はまずありません)と“アルコール”の3つしかないのです。

先述の2つが使用される現場とはほぼ入院中の限られた医療機関のみであり、その使用に関しては非常に厳格に管理された上で投与される薬物です。一度身体依存を呈した薬物から離れた生活を続けるためには、本人の病識の存在や治療意欲はもとより、その人を取り巻く環境が非常に重要になってくるわけですが、麻薬や特殊な睡眠薬などはどんなに欲しいと体が叫んでも、そんなにおいそれと簡単に手に入れる事は不可能ですから、それほどの数の依存症ケースが我が国にあるとは思えません。

ところが3番目のアルコールはどうでしょうか?我が国ではテレビをつければ四六時中ビールだ、サワーだ、カクテルだ、とCMをダラダラと流しています。多少減ったとはいえ自動販売機に小銭さえ持っていれば誰だって購入できるし、少々山の奥に入ってもコンビニでは年中アルコールを緩い規制で売っているのが実情なのです。

薬物依存の治療をサポートする機関としては色々なものが存在しますが、アルコール依存症における“自助グループ”としては世界的には『AA(Alcoholics Anonymous)』と我が国特有の『断酒会』が2巨頭と言っても過言ではありません。

この自助グループとは基本的にはアルコール依存症とは本当に大変な疾患(身体依存を呈するもの)であり、自分1人の力だけでは治療を継続することが困難であるから、「同じ疾患を持つ人達同士が力を合わせてお互い一緒に頑張ろう!」のグループ活動と思って頂ければ簡単かと思います。

でもって、AAと断酒会の違いは何かと申しますと、AAはその名(anonymous)の通りお互いは匿名でどこの誰さんで何をしている人なのかをオープンにしないことが特徴です。一方の断酒会は全日本断酒連盟が取りまとめており全国に500以上の支部(これが断酒会)があります。こちらはAAとは真逆でして自分の全てをさらけ出した上で、場合によっては家族も参加するというグループ活動です。

どちらも一長一短はあろうかと思いますが、今回世間をお騒がせした某グループの元メンバー氏はAAへの参加は絶対に不可能でしょうから、こうなったら断酒会の看板アイドルになってご活躍頂くことが社会復帰への最短コースのような気がいたしますが如何でしょうか・・・。

ついでにこの機会に某事務所は「当事務所に所属するタレントは一切アルコールのCM には出ません!」と宣言すればチョッとかっこいいのではないかと思うのですよ。キリンだってサントリーだってアルコールの入っていない飲料水は沢山ありますからCMを選べばいいだけの事ですけどね。

 

 

仕事を終えて帰宅して、家の中では350mlの缶ビール1本で抑えられているうちは、家庭も職場も平和を維持出来ていると自負する今日この頃であります。
(注)スミマセン!家の外では別なのですが・・・( *´艸`)

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