理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.302

セルフメディケーション税制

小林一広立春も過ぎ暦の上では春となっておりますが、一部の地域によっては先日記録的な大雪となっており、まだまだ春の訪れを実感するにはもう少し時間が必要のようであります。

それでもこの季節には避けて通れないスギ花粉は既に飛散し始めているようで、私は今年も鼻炎薬必携の状態に突入しつつある今日この頃でございますが、コラム読者の皆様方はお変わりなくお過ごしのことと存じます。

今の医療をもってしても未だに完治の声が聞こえてこない“花粉症”でございますが、最近の鼻炎薬のCMを見聞きしますと、つい数年前までは医療機関でバンバン処方をしていた薬の名前が、普通に一般大衆薬(OTC)として販売されております。これらは処方箋なしでも購入できるようにスイッチをされたものとして、その総称を『スイッチOTC』と呼んでいるようです。

花粉症の薬で言いますと「アレジオン」、「アレグラ」、今シーズンからの「クラリチン」といった物どもであります。実は私はこれらを服用しても鼻水は一向にピタッと止まってくれないのでございます。そこで数年前にやっとのことで見つけた“とある点鼻薬”を「処方」してもらい、それを毎朝噴霧することで何とか日常生活を平穏に送ることが可能な春爛漫となりました。めでたし、めでたし。

私の事はさておきまして、そこでこのスイッチOTCの購入額が従来の医療費控除に今年から関与する税制がスタートしたのですけれど皆さんはご存知でしょうか?何でも『セルフメディケーション税制』と言うそうであります。

これまでの医療費控除は、自己負担した医療費が本人と自分と生計を一緒にする家族の分を合わせて「合計10万円」を超えた場合に確定申告時に所得控除を受けることが出来ておりました。そこでこのシステムとは別に先ほどのスイッチOTCの年間購入額が「1万2千円」を超えた場合(上限があり年間10万円まで)にこの税制が適応されるというのでございます。

但し従来の医療費控除制度とこのセルフメディケーション税制を同時に利用は出来ません。とか、対象となる人が限定されております。といったその先の細かいお話はここでは致しませんので、非常に解りづらい厚労省のHPだけでなく(苦笑)、セルフメディケーション税制で検索していただければ「日本一般用医薬品連合会(http://www.jfsmi.jp/)」あたりがわかりやすく解説しておりますのでご一読ください。

そこで私は今回のコラムで何を言いたいのかと言えば、結局のところお上は何が何でも“国民の医療費を下げたくて仕方がない”ためにこのような策に打って出ているのね!ということなのであります。少子高齢化で年々医療費は高騰し続けており、このままでは我が国の保健医療は破綻しかねない勢いであることは皆さんもそれとなく感じておられるかと思います。

ですからまずは処方される薬代を下げさせるべく「ジェネリック医薬品」を次から次へと承認乱発し、オリジナルの創薬を行う製薬メーカーが儲け続けることを阻止して随分経ってきました。そして今度は可能な限り医療を必要以上に受診しないようにと、つい先日まで処方でないと入手できなかった医薬品を、医療を受診することなくゲットできるようにして医療費そのものの削減に乗り込んできたというわけです。

医療者側からすれば、患者さんが診療を受けに来てくれなくなったらこれは死活問題であります。まあ何でもかんでもということにはならないので、受診過多を抑制しようとする狙いでしょうが・・・。

しかしそう遠くない将来にAIが凄まじく発達して、自分のPCに自身の全身のゲノムが解読された情報を入れておき、その時の症状や過去の既往歴、家族歴、検査データ等を入力するだけでピシャッと確定診断をしてくれるようになれば「診察をする医者」はいらなくなります。治療方法も前述のデータから一番確実に効果的で安全な薬をAIが選択してくれたら「処方をする医者」もいらなくなります。

でも手技的な検査や手術はやはり人の手でないと・・・。これも既にダヴィンチという名の機械を使って今は人が手術を行っていますけれど、この機会を動かすようなAIが誕生すれば手術だって全部機械任せとなる時代は来てもおかしくはありませんよね。

こうなってくると、淘汰されてしまう診療科は必ず増えていく事は間違いありません。我が国の医学部は、私が入学した時よりも入試のハードルはかなり上がっているようですが、それだけ苦労して医者になっても先々用なしになってしまうのではたまったものではありません。何科の医者になるのかをかなり慎重に選ぶ必要のある時代がすぐそこまでやってきているような気がいたします。

 

 

とは言えやはり『精神科』は最終的には生身の人でないと無理ではないかと思って日々精進しております・・・(^◇^)ゞ。

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