理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.028

『花粉症とジェネリック』

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 東日本大震災からは早いもので11年が経過してしまい、予想通りにスギ花粉の量は昨年よりも多いようであり、連日の新型コロナの報道さえも吹き飛ばしたロシアのウクライナへの侵攻は、今のところ止みそうもないままで3月も半ばとなってしまいました。「暑さ寒さも彼岸まで」の前に既に夏日を記録してしまいそうな首都圏ですが、コラム読者の皆様方には、この寒暖差で体調を崩されてはおられませんでしょうか?

 先述のように今年の花粉量は非常に多いようで、これだけ常にマスクをして生活をしていても目が痒く鼻水も認めてしまいます。結婚をした年に花粉症を発症(婚姻との因果関係は不明)した私も、目薬や点鼻薬をフル活用して対抗をしているのですが、唯一効果が実感できてここ何年も頼りにしていた点鼻薬が、ナント製造中止になってしまいました。最終出荷が昨年末で、経過措置期間満了日が今月末となったのでございます。その絶対無二のお薬の名前は「リノコートパウダースプレー」と言いまして、花粉症でもご存じない方もひょっとして多いかもしれません。

 私はその薬に行きつくまでにはかなりの種類の内服薬や点鼻薬を試したのですが、どれもしっかりとした効果を実感できなかったり、眠気や口喝といった副作用で辛い思いをしたり、正直困り果てていたところに知人の内科の先生からこの点鼻薬を勧められて、藁をもすがる思いで試してみたところ、これが劇的な改善を認めたために今では小林家全員が花粉症の季節には頼りにする薬となっていたのでございます。

 このお薬のポイントは点鼻薬でありながら“パウダースプレー”というところがキモでありまして、我が国における殆どの点鼻薬は液体を噴霧するものですが、これは“粉”を噴霧するタイプなのです。なんでも聞いたところによりますと薬剤を花粉よりも小さい粒子の粉にして鼻粘膜から吸収させるという、これまでにない薬剤の体内への吸入システムのお薬で、開発して販売していたのは『帝人ファーマ』という会社でした。

 帝人(TEIJIN)と言えば、テレビのCMなどで「だけじゃない。テイジン」というのをやっていましたが、もともと帝人さんは繊維が中心の会社でした。その昔はボルボというスウェーデンの車を輸入販売していたり、今回登場した製薬部門もあったり、今では多岐にわたって色々な関連会社があるユニークな会社と言ってもよいでしょう。ですから「だけじゃない」というキャッチフレーズで自社広告も制作されていたのだと思います。

 そのTEIJINさんがこの画期的なお薬の製造販売を中止してしまうという決定が下されて、今後小林家はこれから毎春を一体どう乗り切ればよいのか、途方に暮れてしまうのでありました。そこで多くの方々は「今の世の中、先発薬のパテントが切れれば、ジェネリックがあるから問題ないでしょ」と思われるかと存じます。そうです確かに東和薬品さん(玉ねぎ頭のおばさまが宣伝しているあの会社です)が、現在も同じようなタイプのジェネリックを確かに販売しております。

私は今回の件で初めて知ったのですが、2009年にTEIJINさんが東和さんを不正競争防止法と著作権法に基づく差止めと損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起していたのであります。しかしこの件は同年9月に和解が成立したようで、その後は特に何もなく現在に至っていたのでありました。「だったらそのジェネリックでいいじゃん!!」とおっしゃるかもしれませんが、ここが実際に経験ある方も少なくないと思いますジェネリックあるあるネタです。

 先発品よりも値段が安いので、国としては国民の医療費を少しでも減額しようと、ジェネリックへの切り替えをやたら推奨しております。それはあくまで“全く同じ薬”が安ければのお話です。「えっ、ジェネリックって同じ薬のはずでしょ?」と驚かれる方も多いと思いますが、医薬品の“薬剤”の成分としては確かに同じものです。しかし“薬品”というものはその成分だけで製造されているわけではありません。

 服用した薬が体内で長時間にわたって効果を示すには、服用後に体内でどのように溶解し吸収されて効果を発揮するかなどはその薬品の製造過程で大きく変わります。外用薬であればその薬剤をどのような基剤に混ぜ込むかで皮膚からの吸収速度や肌触りがどうかというような使用感も変わるわけです。つまりその部分に関しては薬剤のパテントが切れたからと言って先発開発メーカーが製造の全てのノウハウをオープンにはしませんから、そのような微妙なところが絡んでくる薬品はジェネリックとオリジナルでは異なってしまうのです。

 つまり薬剤を花粉よりも小さい粉にして噴霧して点鼻させるというナノテクノロジーを駆使した製剤のノウハウや上手に1回分を噴霧できる容器のメカニズムは、恐らく後発医薬品メーカーに作ることは出来ないのではないかと思うのでございます。今現在はTEIJINさんの『リノコートパウダースプレー』の手持ち在庫で花粉と闘っている私としましては、東和さん『ベクロメタゾン鼻用パウダー』が全く同じように効果を発揮するはずがないのでは・・・、と今から戦々恐々としているわけでございます。

 それにしても「だけじゃない、TEIJIN」さんが花粉症の季節を前に製造販売を中止してしまったのか詳細は不明(恐らく採算が合わなくなってしまったからだとは思いますけど)ですが、このような特殊でマニアックな薬品がこの世からなくなってしまうと、非常に辛い思いをする根強いファン(患者)は途方に暮れてしまうという2022年春の悲劇のお話でございました。

 

 

 これだけ絶賛したリノコートパウダースプレーの唯一の難点は、就寝前の入浴中にその日花粉から鼻粘膜をしっかり守ってくれていた粉が、風呂の湯気で緩んできて浴槽に白い鼻ク●として飛び出してしまう事だけです(笑)

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