理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.350

医学部入試と医者不足

DRkobayashi1
少し前にお雑煮を食べて、アナログな年賀状の整理をして、よし新年を迎えたな!と思っていたのにもう3月です。今年も既に1/6が終わってしまったわけでございます。歳をとると本当に1年が早く感じられてしまいます。「1年=人生分の1の法則(段々と分母が大きくなるから1年が小さくなる)」と私は1人で提唱しておりますが・・・。

有難くない予想通りスギ花粉は昨年を遥かに上回る量が“飛散”しており、そうなりますとあちこちで“悲惨”な光景(我が家にも見受けております)を目撃してしまいます。そんな涙と鼻水まみれの年度末ですが、コラム読者の皆様に於かれましては、お変わりなくご清祥の事と存じます。

3月に入って大学入試もほぼ終盤となり、4月からの進路に胸を躍らせておられる方、一方で来年に向けて再起を誓う方、正に悲喜こもごもといったところかと存じます。我々の業界と申しますか、昨年発覚し多くの大学に影響を及ぼした医学部入試問題で、今年の受験生の方々は少なからず何某かの影響を受けられたのだと思います。

事の発端となった東京医科大学は、昨年2017年と2018年の入試で不正な得点操作などがなければ合格していた可能性のあるとする101人に入学の意向を確認し、49人の希望がありそのうちの44人を今年に追加合格とする措置を取りました。そこでは「定員に達した」ことを理由に5人の女子は再び不合格とされたのです。

そしていつもであれば90人の募集定員を46人に削減した今年の入試が終わり、入学手続きの期限を先月の25日に設定してふたを開けてみたところ、その昨年の段階で入学を希望していた44人のうちの20人程度が最終的に入学を辞退したというのです。

そうなると昨年の段階で大学側から入学の意志を問われ、入学を希望していながらも再び不合格とされた5人は、20人も辞退者が出たのであれば当然繰り上がるのかと思いきや、その5名には今年の入学を認めなかったというのであります。

いやいや、それってどうなのでしょうか?入試における入学する権利としての優先順位とは、当然正規合格をした人達が1番で、そして次に辞退者などが出て欠員が生じた場合に補欠合格した人達から順次繰り上がって行く、これで定員を埋めていくわけです。

ところが今回の東京医大はかなり特殊なケースで、今年の入試に関係ない過去の入試からの合格者を捻出する、しかも1人や2人ではないかなり大人数の調整を要する大変なものであります。

そして過去に合格の可能性があったかもしれない101人と大学側が『勝手に断定した』段階で、その中で入学希望があれば当然全て受け入れるのが筋のような気がしたのに、何故か5人の女子は入学を許可されず不合格とされ、なお且つその入学を許可された人から辞退者が出れば繰り上がるのが普通と思いきや再び不合格のままの扱いするという、摩訶不思議な対応に私は首をひねっております。私がその子の親なら大学側にきちんとした納得できる説明を求めるお話であります。

医学部に入学するということは、あとは医者になるかならないかの二者択一でしかなく、普通の学部の入学試験というよりもどちらかと言えば“入社試験”に近い感覚と言ってよいかもしれません。勿論医者になることが全てではありませんし、入学してから思っていた事との違いに悩んだ末に進路を変える人だっておられます。それだけ入学してからの道幅は狭いだけに、入試そのものがその人の人生における大きな岐路になると言っても過言ではありません。

その人生を左右する入学試験なるものをこのような大学側の一方的な都合だけで、しかも10代から20代にかけての貴重な1年をこんな形で振り回されてしまうという今回の事件(と言っても良いでしょう)には、正直私は憤りを感じてしまいました。

先日その統計処理にここのところで一抹の不安のあるとされる厚労省が、2036年には全国335地域のうち約220地域で約2万4000人の医師不足が見込まれると算定したようです。そして私の出身県でもある山口県を含めた12道県では最も医師確保が進んだ場合でも5323人の不足が見込まれ、医師確保が進まない場合は、34道県で3万人超が不足する恐れがあると試算しました。これ信じてもいいのですかね?

急激な人口増加に医師の確保が追い付かない埼玉県などを除けば、どうしても地方の医師不足は深刻になってくるようで、都会と地方の格差がどんどん大きくなっています。これは以前のコラムでも指摘をした、我々の時には存在しなかった現在の研修医制度が問題の1つであることは明らかだと思います。

地方の国立大学を卒業したら多くの研修医がその地元での研修をせずに都会の病院で研修をして、そしてそのまま出身大学には戻らないという流れがもはや止められなくなっている結果なのです。地方医大の医局制度の崩壊と言っても良いでしょう。

最近では地方の国立大学において、入学の段階で卒業後には一定期間は地元に勤務する事を義務付けた枠で地元出身の入学者を確保するとか、そもそもそれを何とかするために自治医科大学はその昔誕生したのですが、それだけではとてもとても追いつかなくなっているのが現状という事です。

こうなるとふるさと納税だけではない『地方復興』と『少子高齢化』を早急に改善する打開策を講じることに加えて、今回の入試の件で問題になっている女医における職場環境の改善(常勤で働かない女医をいかに増やさないか)こそが、将来の我が国における医師不足の予防につながるものと思っている次第です。

 

 

私の受験の時に医学部が現在のような高倍率、高偏差値であったなら、今こうしてこのように呑気にコラムを書いている小林院長は存在していなかったかも・・・(汗)。

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