理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.343

アンガーマネジメント

DRkobayashi1
今年の流行語大賞の候補が発表されて、紅白歌合戦の出場歌手の発表もあり、いよいよ今年も残り少なくなってきたことを否が応でも感じさせられる頃となりました。今冬はエルニーニョ現象の影響で暖冬となる予想になっておりますが、果たしてどうなることでしょうか?

今年は流行語大賞も全然知らない言葉があったり、紅白出場メンバーも全然聞いたこともない歌手がいたり、果たしてこれは私が時代に取り残されている事なのかと一抹の不安も無きにしも非ずと言ったところであります。そんなこんなで今年も残り1ヶ月と半分となってしまいましたが、コラム読者の皆様に於かれましては、お元気にお過ごしの事と存じます。

さて皆様は『アンガーマネジメント』なる言葉をご存知でしょうか?別に今年の流行語大賞にノミネートされているわけではありませんが、先日この言葉に関しての問い合わせのようなものを頂きまして、今回改めて考えてみたわけでございます。

アンガー⇒怒り、マネジメント⇒管理、でしょうから自分の中から沸々と湧き上がる怒りをうまく管理して上手に付き合う方法の事のようで、実際に「日本アンガーマネジメント協会」なる団体も存在しているみたいです。こんな団体ご存知でしたか?

確かに最近はチョッとしたことで、それがソコソコのいざこざに発展して、最後にはトンでもない事件に発展するケースをニュースなどで見聞きすることは珍しくはありません。昨今の様々なスポーツ団体におけるパワハラ問題だって、根っこの部分は指導者の怒りが生徒や教え子に向かって一方的に爆発しているからのように見えております。

よく昔から “怒る”のと“叱る”のは似て非なるものと言われますが、パワハラ指導者やパワハラ上司はあくまでも「叱っているのである」と言い張るものと思われますが、その境界をはっきりさせることはなかなか困難ではないかと思います。

“怒り”とはただ単に感情を表出するだけのものであり、“叱り”にはその裏側にちゃんとした愛情や教育的意味合いが存在するものと説明されても、結局最後の最後は受ける側がそれをどうとらえるかの問題でしょう。過日の女子体操の選手とコーチの間では、映像的にはあれだけ完ぺきにどつかれても本人が「パワハラではなくてちゃんとした指導ですぅぅぅ!」と言っておりましたから周囲は・・・、になってしまいましたよね。

一方的に自分の怒りを周囲に臆面もなくぶちまける事で、対人的なコミュニケーションに障害をきたし、自身の置かれた社会生活に支障をきたしてしまう事は自分にとっても周囲にとっても良いことはないのは明らかです。そこでその協会とは“アンガー”を上手に“マネジメント”しましょうね!を啓蒙していくという趣旨の団体だと類推致します。

得てして人間は怒る前触れとして、不安や心配が先に立ってしまうものです。そういった不安のようなストレスが降りかかった時に、我々は無意識に『防衛機制』という方法で対処するものであります。この防衛機制が上手く機能出来ないと怒りに変化してしまう場合もあるのかもしれません。

この防衛機制についての説明をしだすと今回のコラムが大変長くなってしまいますので、過去にさかのぼってVol.37「不安への対応」をご一読して頂ければ、この防衛機制とはどのようなものかをご理解頂けると思いますので何卒宜しくお願い申し上げます。(過去にはこのコラムも割と学術的な内容の文章を書いていたのです(笑))

とは言え、人間生きていれば喜怒哀楽は当たり前の事であり、「では皆さんそれではその中の“怒”をきちんと管理しましょう!」なんて、普通に生きていく事を何かによってコントロールされているようで息苦しさのようなものを感じてしまうのは私だけでしょうか?

これもある意味で怒る側にも、怒られる側にもお互いを受け入れる余裕の許容量みたいなものが、時代を追うごとに少なくなっているから、今となってはこうでもしないと世の中大変な事になってしまうと危機感をお持ちの方々が沢山いらっしゃるという事の表れなのでしょうか?

常に忖度しながら正直に自分を表現できないなんて、本当に住みにくい世の中になっているような気さえします。当然、過ぎたるは何とか・・・ですから、理不尽な怒りを受け入れる事は出来ませんし、そんな毒をまき散らすなんてあってはならないことだと勿論思っております。その閉塞感が結局最終的に匿名でネット上に罵詈雑言を書き連ねるという行為に及ぶ世の中になっている気もしています。

今年ノーベル医学生理学賞を受賞された本庶先生は、研究の第一歩として「教科書を疑う事から始めろ!」とおっしゃられていました。男性にとって“怒り”の源としては、テストステロン(男性ホルモン)がしっかりと備わってないとしっかりと出てこないものです。

他人にまき散らす理不尽な怒りではなく、向上心を兼ね備えた自分自身に対する“怒り”は、この混沌とした世の中を突き進んでいくうえで必要不可欠なものだと私は思っております。確かにこのような内なる怒りにはそれなりの管理は必要でしょう。しかしその内なる“怒り”の火が消えないように、まだまだ精進していく所存であると心に誓った冬の入りでありました。

 

 

もちろん家庭内では“怒り”の火消しに必死になるだけの日々であることは間違いございませんが・・・(泣)

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