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院長の部屋

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.295 ブラック

小林一広今年もいよいよ残り2ヶ月となってしまいました。昨年は暖冬で冬物の重衣料の売り上げが全くダメで、アパレル業界は大変だったと聞きますがさて今年は如何でしょうか?富士山の初冠雪が今年は記録的には最も遅かったようで、過去のデータによると初冠雪が遅かった年の冬は寒くなるそうですが・・・。そんな年の瀬も押し迫ってくる中、コラム読者の皆様方に於かれましてはお変わりなくご清祥の事と存じます。

あのボブ・ディラン氏がついに沈黙を破ってノーベル文学賞の受理を表明したようであります。私としましては“いや~~~授賞式の当日まで何があるかわからない”とまだどこかに変な期待をしておりますが、まあしれっと受け取って一曲ご披露でもして案外当日はすんなり終わるのかもしれません。

さてそんな更けゆく秋の中で今回のお題目でございますが、先日大手広告代理店の新人社員さんが過労を理由に自殺をしてしまったという悲しい報道がありました。残業時間が月に100時間を超えていたとの事でしたが、一方で公開されている本人のSNSの書き込みなどから推測すると、おそらくそれは100時間どころの残業ではなくそれをとてつもなく超越していたものと想像することは難くはありません。

皆さんもご存知かもしれませんが、この会社は1991年に過労によりうつ病を発症していたと思われる社員が自殺に追い込まれて、遺族が会社側を訴えて最高裁までいったケースが過去にあります。最終的に会社側の過労や疾病の存続に対する安全配慮義務違反が認定されて、ナント1億6800万円の賠償金を払う判例となったものであります。

そこでこの判例を機に多くの企業が社員のメンタルヘルスへの対応強化に奔走することとなり、我々精神科医に対しまして企業での嘱託の仕事が急激に増えた時期でもありました。なぜならば社員のメンタルヘルスを疎かにしてこのような事件が起こる度に、これだけの賠償金を支払わなくてはならないとなると、社長のクビどころか会社の存続すら危うくなりますからね。

ここ数年企業に対して“ブラック”という頭文字が付くケースを多く目にいたします。翻訳すると“悪徳”とでもいえばいいのでしょうか。多くのケースとして過剰な残業を強いておきながら、それに対する対価としての賃金を支払わない事を指すものです。ただ賃金さえ払えばいくらでも働かせても良いかと言えば、当然ですが労働時間そのものに制限もあります。

その昔から「若い時の苦労は買ってでもせよ」と言われていましたが、今の時代それを真に受ける若人や環境は激減したといってもよいでしょう。ただ私自身を振り返りますれば大学の救命救急センターに勤務していた当時などは、隔日の当直はほぼ当たり前で当直明けはそのまま日勤となっていましたから30時間以上センターにいることは普通でした。(勿論30時間一睡もしないで勤務を続けることはありませんで、ちょっとでも寝れそうなときには爆睡しておりましが・・・)

でありますのでその当時の給料を就労時間で割れば、間違いなくマクドナルドのバイトの賃金よりも確実に安かったはずです(笑)。ただそれを私自身“辛い”とか、“酷い”とか、“辞めたい”とか、“もう死んでしまいたい”とか思うことは一度もありませんでした。なんの疑う余地もなくそれが普通で、それが当たり前だと思っていたからと言えばそれまでかもしれません。

生と死の狭間で緊急で搬送されてこられる方々を助けられた喜び、逆に助けることが出来なかった悔しさ、医師として新しい知識や手技を身につけていける充実感、そんなものの方が明らかにその労働環境を凌駕していると自覚できていたからだと思います。

これは今の時代からすれば明らかに『ブラック』な労働環境であることを否定は出来ません。でも私自身はその当時を振り返ってそこをブラックだったとは思えないのです。そしてその期間があるからこそ今の自分があるのだと確信すらしております。

だからと言ってブラックとされるような労働環境を全て肯定するつもりも、推奨するつもりも一切ございません。最近の若いドクターの労働環境は私たちの頃のような状況とは随分変わっているとも聞いています。

確かにそのような就労環境ではありましたが、その時には一緒になって必死で診療をした同僚やスタッフ、同時に熱心にご指導くださった諸先生方、そのような人たちの中で仕事をしていたことがブラックを私に感じさせなかったのだと思います。

先述の新人社員の方に関しては会社側の体制がまず問われていますが、その前に彼女を取り巻く同僚や上司や会社という組織以前に身近にいる人達にまず問題があったのではないかと私は思うのです。そのような同僚や上司を構成していくのが最終的には会社側の体制ということにはなるのでしょうけれど、その前にどんな職場においてもまずは人ありきのはずです!

彼女をこのような非常に辛い結果に導いてしまった大きな原因の一つは、その当時の彼女を取り巻く人間関係であったと言っても過言ではないでしょう。ただこればかりはどんなに自分自身で願おうとも、大きな組織になればなる程人事はどうにも願い通りにはいかない場合が多くなってしまうものです。

以前にこのコラムにも書かせて頂きましたが、うつ病を発症し易い『病前性格』というものがあるのをご存知の方もいらっしゃるかと思います。基本的には“几帳面”で、“責任感が強く”て、“手を抜くことが苦手”で、“自責感に溢れ”て、といったケースに多いとされています。私は直接彼女を診察した医者ではありませんが、おそらく本ケースは正にこういった修飾語が当てはまっていたのだと推測いたします。

先日当院で私も面接に立ち会って採用を決めて1日だけオリエンテーションに来てもらい、さあ本日初出勤の日になってみると何の連絡もなく欠勤し、その後こちらが連絡を試みても全くなしのつぶてでそのままという女性がいました。このような人は間違いなく職場でうつ病になって自ら死を選ぶようなことは100%しない人ですから全然心配ありません。って、その前にどれだけ俺は人を見る目がないのだと自暴自棄になり、こちらが暫く抑うつ状態に陥りましたが・・・(苦笑)。

私自身現在はさすがに救命救急センターに在籍していた時のような勤務時間ではありませんが、その時とは違った立場で、当時とはまた異なるプレッシャーの中で医療に携わっています。しかしあの時から今現在まで一度たりとも、仕事が辛くて仕方がない、もう耐えられず医師を辞めよう、と幸い思ったことがなかったのは、現在も一緒になって頑張って働いてくれている『スタッフ』に恵まれ、プライベートでは日々をサポートしてくれる『家族』がいたからだと思う次第です。

うわべだけ(労働時間だけ)で言えばおそらくブラックな環境の職場は数えたらきりがないほど我が国にはあるはずです。ではそこで勤務する人がすべてこのような末路とはならないのは、個人の病前性格もありますが同じ仕事をするのであれば「どこでするか」よりも「誰とするか」の方が大切だからだと思うのです。

彼女もあの会社でも違う部署で異なるスタッフと一緒に仕事をしていたら、きっとこの様な結果にはなっていなかったのではないか、自分を取り巻く身近な人達がどうかかわってくれるかによるものがやはり一番重要なのだとつくづく思う晩秋でありました。

 

 

こうして声を大にしてブラック、ブラックと騒ぎ立てる「マスコミ業界」こそ、そのブラックの最たる職場のはずなのですが、いつものように自分たちの事は棚上げでしょうか・・・。

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