理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.271

副作用の報道

小林一広

はいはい、今年も残すところあと2ヶ月ですよ~~!南アフリカは残念ながらオールブラックス(ニュージーランド代表ですね)に僅差で敗れてしまい、私の予想確定連続記録は途切れたわけですが、コラム読者の皆様方は朝晩の冷え込みに体調を崩されることもなくお元気にお過ごしのことと存じます。

南の海で傍若無人の振る舞いを続ける中国に対して、さすがのオバマ大統領も堪忍袋の緒が切れてしまったようで、遂にイージス艦を中国が勝手に造成中の人工島の12カイリ内に派遣したようです。

アメリカ国内でも中国をこれだけのさばらせてしまったのは、これまで全くと言っていいほど中国に対して何も抑制をかけることをしてこなかった無策のオバマ大統領が“一番の悪者である”、といったレッテルを貼られてしまっているとも言われております。

まあこれですぐにドンパチが始まるなんて、「まともな」近代国家間に於いてはあり得ないと思いますが、習近平氏がその「まともでない」中国人民解放軍を掌握しきれなくなってしまった場合、勝手に何かをするようなことになれば、それは有事となってしまう可能性もゼロではないでしょう。常識的な大人の対応を願うのみです。

閑話休題。さてさて本日のお題でございます。先日厚生労働省が発表し、新聞報道等でご存知の方も多いかもしれませんが、ある薬剤の副作用によると思われる死亡報告がございました。

その薬とは、私達精神科医が治療で用いる“向精神薬”の副作用として出くわすことは頻繁であります『便秘』に対して処方する“酸化マグネシウム”なるお薬であります。これは本当に昔からあるもので、豆腐を作る時に使用する「にがり」に殆ど近い成分だと思っていただければ、そんなに大それた新薬でもないことはご理解いただけると思います。

商品名としては「マグラックス」「マグミット」等という名前で我が国では年間に約4500万人に処方をされており、便秘でお困りの方などは過去に処方を受けられたこともあろうかと思います。そのマグネシウムという成分の血液中の濃度が過剰に上昇することで、吐き気やめまい、筋力低下やだるさ、更には呼吸不全や昏睡状態となり最悪の場合心停止に至るというものです。

確かにこの部分だけを取り上げると、非常に注意が必要で怖い薬のような印象を持たれるかと思いますが、一般の方が通常の処方量を服用している限りにおいてはこのようなことはまず発症しません。便秘を改善する薬剤はこれ以外にも沢山あるのですが、むしろ常習性や他の副作用や安全性からも、むしろ我々が最初に処方を試みるような安全なタイプの部類に属する薬剤なのです。

この世の中に存在する医薬品に於いて副作用が全くない薬は存在しておりません。ですが薬によってはそれを使用するにあたり、“諸刃の剣”を覚悟のうえで投与しなくてはならない物から、本当に運悪くよっぽどのことが起こらない限りまず大丈夫な物、といったレベルの薬まで種類は様々であります。

ですから処方をする我々医師がその薬の事をしっかりと理解し、それを服用して頂く上できちんと正しく患者さんにその情報をお伝えすることが必要不可欠であることは言うまでもありません。そうすることによって、もし副作用が出現しても早期に適切な対応を行えば、最悪の事態を引き起こすような事は未然に防ぐことが出来るわけです。

ですからその副作用に於いて大切なことの一つに、出現頻度は重要なポイントになります。とある疾患に対して他に有効な薬がなく、それを使用する以外に方法はない。しかし重篤となりうる副作用の出現率が殆どの人に出現するような薬を扱う場合と、日常生活をするうえで交通事故に遭遇する確率よりもはるかに低い出現率の副作用の薬では、当然処方する側もされる側も心構えは全然違うものであります。

そして先ほどから申し上げております“酸化マグネシウム”は明らかに後者の方の薬なのですが、それをいかにも前者のようにとらえられるような報道をされてしまうと、それを現在内服中の方々や、それだけでこの薬を知ってしまった方々に不必要な恐怖心だけを植え付ける結果となってしまうのであります。

つまり報道の仕方によって一般の方々が得られる情報が歪曲されてしまうことが、臨床の現場に於いてどれだけ不必要な混乱を来すものなのかをマスコミの方々はもう少しそのあたりをご理解して記事にしてほしいのであります。

犬が人を噛んでも大したインパクトはなく、噛んだ犬を警察官が13発も発砲すればセンセーショナルな記事になるのはわかります。薬の副作用で人が亡くなることは勿論あってはならない事で、「そら見たことか!」と世間様に知らしめたい気持ちもわからんでもありません。

しかしその背景をあまりにも端折りすぎて、誤解を招くような報道の仕方になってしまうことには十分ご注意をしていただきたいのと、情報を受ける側の皆さんもそんな記事のうわべだけを鵜呑みにして、不必要に振り回されないように気を付けて頂きたいと願う次第であります。

 

 

「ほぼ大丈夫であろう!」と思っていても、予期せぬことが起こるのは薬だけではなく家庭内にも常に潜んでいることは十分わかっているのですが・・・(爆)

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