理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.296

資格返上

小林一広今年もあっという間に11月も半ばとなってしまいました。残暑が厳しかったこともあって、秋を感じる間もなく冬に突入してしまったかのようであります。インフルエンザも例年よりも早く流行の兆しをみせているようですが、コラム読者の皆様方に於かれましては慌ただしい年末に向けましても健やかにお過ごしのことと存じます。

さてアメリカに於ける国を挙げての壮大な“このおジイとおバアのどっちが嫌いでしょうか選手権”も、接戦の末に先日「実はおバアが嫌われていた!」という結果が判明致しました。我が国の関係各省もその予想外(?)の結果の対応に慌てふためいていたようであります。

その次期大統領となる予定のおジイですが、当選後の今のところでのコメントは、選挙中のような過激な発言をかなりオブラートでくるんだような物言いになっております。これもまた今後への戦略なのか布石なのか来年就任してみないとわかりませんが・・・。

その我が国で言うところの『後期高齢者』の方々がここのところ全国のあちこちで交通事故を引き起こしておられます。恐らく細々とした事故は全国あちこちで日々起こっているはずだとは思われますが、全くの他人様を巻き込んでということになりますと、これは何とも筆舌に尽くしがたい事件の様相を呈してしまいますので、何かマスコミが人為的にこの手の事件に対してキャンペーンを繰り広げているのではないかと若干勘ぐってはおります。

その昔起こった悪意と殺意に満ち溢れた秋葉原の事件のようなものではなく、殆どの場合が自動車の操作ミスや認知症等に伴う判断ミスによるもので、今後の機械の進歩(衝突防止機能の精度アップや装着義務の強化)や周囲の対応如何では未然に防ぐことも出来なくはない事故と言えるでしょう。

どうしても地方では高齢者が多くなり、生活をする上での交通手段が公共の乗り物では立ち行かないため、自らハンドルを握らざるを得ない状況が多くみられるためにひき起っていることは明確であります。そこで運転免許証の自主返納の話題となるのですが、そのタイミングがどうしても難しいということであります。

皆様もご存知の通り、運転免許には更新が定期的にありますから、この更新時の手続きをある一定の年齢を超えた人たちには、より実践的なシミュレーターなどを使ってのテストを受けてもらい、そこでのきちんとしたふるい分けをするとか、受講される方は少し大変かもしれませんが、更新期間を通常より短くして(認知症の症状は月単位で進行するケースも珍しくありませんので)更新をして頂くようにするといった手立てが必要なのではないでしょうか。

それでもって“人の振り見て我が振り直せ”ではございませんが、私の現在の生業でございます“医師”もお上から頂いております資格によって成立する仕事でございます。しかもこの資格は恐ろしいことに更新もなければ年齢の上限設定ももちろんございません。

勤務医という立場ですとそれぞれの施設に定年なるものが設定されているでしょうから、その年齢になればその職場でのポジションからは引退ということになります。しかし医師であることはいくつになっても認められているものですから、悪く言えばこれまた始末に負えないケースも当然認められるということです。

このコラムでも何度か記載させていただきましたが、我々精神科医が取り扱う疾患に“アルコール依存症”という大変な疾患があります。一般の方々からすればどれだけお酒を飲めばその診断となるのか?どんな状態になればそのような診断がつくのか?そんなことを尋ねられてピンとくる方はまずいらっしゃらないと思います。

勿論医療ですからすべての疾患に診断基準というものは存在しています。しかしながら血圧を測定し基準値を超えたから「ハイ高血圧です!」、血液検査から基準値をオーバーしているので「ハイ糖尿病です!」、細胞の組織検査をしてみたら悪性所見だったから「ハイ癌です!」といった、いつでもどこでも白黒をキッチリつけることが可能ではないのが精神疾患のややこしいところではあるのです。

これも以前このコラムに書いたと思いますが、誤解を恐れず言ってしまうと精神疾患の究極の診断基準とは『周りの人様にご迷惑をお掛けするかしないか』だと私は思っております。多少飲酒量が多いと思われても、ちゃんと仕事に行って、そこできちんと仕事をして、生活に影響の出ない程度の酒代であれば、たとえそれで肝臓を少々悪くしても“酒好きのお父さん”の範疇を超えないわけです。つまり飲んだ絶対量ではないのです。

多少物覚えが悪くても、物忘れが目立っても、まあ家族と一緒普通に生活が出来ているうちは、“チョッとボケてきたお爺さん”で済むわけで、親族一同から認知症のレッテルを貼られることはないのです。

これが酔っ払って仕事に行かない、仕事先で使い物にならない、生活費を飲み代にしてしまうという状況、さっきまで言っていたことと全く違うこと言いだして暴れだす、皆は就寝している時間に起きてあちこちを徘徊してしまうという状況、このように周囲の人達か困ってしまって初めて事例化して確定診断をつけられるものなのです。

今回の運転免許の問題も、結局は周囲に迷惑をかけない通常の運転が常時できるドライバーであれば、80歳でも90歳でも車を運転することは問題ないことなのだと思います。そこには当然個人差が生じていますから、単に年齢だけでの線引きでは酷な話になってしまいます。

以前某雑誌で対談をさせて頂いたプロとしては三浦知良選手の次に高齢のサッカー選手が、今シーズンを限りに引退を決意されると聞きました。勿論心身が健康であればサッカーをすることは可能ですが、プロとして求められるパフォーマンスが永遠に出来るわけではありません。彼はそのプロ選手としてフィールドに立つことに対しての一線を退くタイミングが今年であると決断されたのでしょう。

人生の幕引きをどうするかは自分一人では決められない事ではありますが、今の世の中その前に色々な事と決別を余儀なくさせられる時代となっているようです。

 

 

さ~~~てこの私は「医師免許」と「運転免許」のどちらを先に返上しなくてはならなくなるのでしょうか?その前に「夫」の返上が先?(苦笑)

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